福山平成大学 小川教授の 「経営の福袋」第67回 イノベーションの手本(下)

 スーパーの売り場面積と比べ、コンビニは面積の限られた非常に小さな店舗です。それにもかかわらず日常生活に必要なものは大体揃っており、ほぼ欠品がないことには改めて驚かされます。この仕組みを試行錯誤しながら編み出したのが鈴木元会長であり、その結実がコンビニの戦略です。また、その基盤となったのがPOSシステムという、レジでピッとバーコードを読み取るあの機械です。当初は、POSによって打ち間違いや計算間違いを防げるので、非正規従業員の多いコンビニの恩恵は大きいだろうと考えていましたが、その強烈な威力の本質は別の面にありました。
 POSで読み込まれた商品情報は瞬時に本部に伝わります。セブン‐イレブンの店舗数は全国で22,000弱ですが、各店舗からリアルタイムで何が何個売れたという情報が本社に伝えられます。その分析により、本社は「売れ筋」と「死に筋」を選り分け、売れ筋商品のみを店舗に置くことで効率的な品揃えを実現しているのです。さらに、nanaco会員の顧客情報などと併せたPOS情報は、マーケティングや仕入れ、商品開発などの戦略策定にも活かされています。
 しかし、いくら売れ筋を把握しても品切れでは意味がないので、確実な在庫補充の仕組みが必要になります。コンビニでは、店頭に並んでいる商品が在庫ですので、商品が売れると一個単位の在庫補充が必要で、発注ロットを小さくせざるを得ません。さらに、ロットを小さくすることによる在庫切れの可能性を防ぐには、配達頻度を上げる必要が出てきます。実は、この問題の解決のため「多頻度小口配送」という仕組みが編み出されます。
 ただ、それによって売れ筋情報を活かせる反面、配送頻度が増すと物流業務の手間とコストも増すという新たな問題が生じます。コンビニの約3,000種の品揃えには、70~80社の取引先が必要だと言われますが、各取引先による一個単位かつ多頻度の在庫補充は、あまりにも非効率です。そこで考え出されたのが、複数の取引先の商品を「共同配送センター」で一台のトラックにまとめて載せ、各店舗に配達する「共同配送」という仕組みです。 
 当初、共同配送は日持ちしない弁当などの「日配食品」から始まったのですが、やがてほとんどの納入業者に拡がります。しかし、あらゆる商品を同じトラックで運ぶのは難しいことが判明します。そこで生み出されたのが、温度帯別に商品を分類し、温度帯別のトラックで配送する方法です。この「温度帯別物流」により、当初一日平均80台だったトラックの台数が、今では10台程度にまで減少しているということです。
 さらに、各店舗への搬入の混雑を避けるため、各トラックの到着時刻を調整する「ダイヤグラム配送」を導入し、同じ時間帯に搬入が集中することなく、弁当などの売れる時間帯が決まっている商品もタイミングを逃さず、適切な時間に配達される体制が確立されています。そして、それはPOSによるリアルタイムの商品の売れ行き情報を複数の業者と共有することで、無駄のない物流体制が実現しているのです。
 いかがでしょう。普段、気軽に利用しているコンビニですが、問題発生・問題解決の繰り返しの中で数々のイノベーションが生まれ、システムが洗練されてきたことを、ご理解いただけましたでしょうか。