福山平成大学 小川教授の「経営の福袋」第57回 読書について

下記の略歴にあるように、ボクは大学を出てから証券会社で営業の仕事に携わってきました。しかし、40歳の時に大規模なリストラがあり、早期退職制度に応じて18年間勤めた会社を辞めました。そこで、折角、会社を辞めたのだから好きな読書に勤しみながら生計を立てられる仕事はないだろうかと考え、それには小説家になるか、大学の先生になるしかないと思い至りました。しかし、小説を書けるほどの才能はないだろうという思案の結果として、今のボクがあるという訳です。

 ボクのような本好きのことを、「本の虫」などと言いますが、その語源は古い本に住み付いてそれを餌にする「紙魚(シミ)」に由来するようです。英語で紙魚を表すbookwormという単語にも本の虫の意味がある一致は不思議ですが、この虫が本に食い付くように読書にばかり熱中する人を蔑む意味で、本の虫と呼ぶようになったようです。確かに、本の虫は「書痴」とか「書淫」という、あまり品の良くない言葉に言い換えることができます。一方、英語にはbookaholicという言葉もあります。語尾の“holic”は「中毒」を意味する接尾語で、アルコール中毒者を意味するalcoholicから派生した言葉だとされていますので、読書中毒とか活字中毒のようなニュアンスです。

 なぜ、そんなに本を読むのかと聞かれることがあります。最も典型的なケースは、ボクの尊敬する人や気に掛かる人が、何々という本が、斯々然々で面白かったとか、役に立ったなどと話したり書いたりしていると、その本を実際に読んでみたいという好奇心が抑え切れなくなってしまうのです。さらに、面白い本の中に、あの本が参考になったとか、ある本にこう書かれていたという風に、ボクの興味のあることが記されていると芋づる式に本が増殖していきます。ただ、これが学術的な論文を執筆する時の参考文献集めには大いに威力を発揮してくれるのは、怪我の功名というものでしょう。

 また、雑誌や新聞などの書評欄や書籍の広告欄にはどうしても目が行ってしまいます。購読している日本経済新聞の、土曜版の書評欄を毎週楽しみにしていますが、最近は新刊書案内のような書評よりも、同じ紙面に掲載されている「リーダーの本棚」を興味深く読んでいます。日経新聞によれば、このコーナーは「企業の経営者や政治家、研究者など日本のリーダーたちが感銘を受けた書籍と読書術について、経験を踏まえて紹介します」と謳われています。

 そこには「私の読書遍歴」と題して、毎回の執筆者の「座右の書」と「その他愛読書」が列記され、それらの本について自らのエピソードを絡めて紹介されています。ですから、新刊書の内容紹介とその感想が述べられた平板な書評欄の書評よりも、リーダーたちの深い考え方や熱い思いの込められた、具体的な経歴のストーリーの中に位置づけられて紹介されている本に、大いに好奇心を掻き立てられる訳です。まさに今、経営学でも話題になっている「ストーリー」の力とは、こういうものだと思います。

 そして、つくづく感心することは、多忙なリーダーたちがとてもよく本を読んでいるということです。さらに、各々それが、その人の人格や思想を形成する支柱になっているように思います。さて、皆さまいかがでしょう。最近、読書なさっておられますか?