福山平成大学 小川教授の「経営の福袋」第54リスクとビジネス(下)

 事業、すなわちビジネスは「リスクテイク」の典型だと言えます。売上や利益の変動、顧客数の増減、原材料費や光熱費の変動、新製品開発の成功・不成功、競合企業の動向等々、ビジネスには必ずリスク、つまり不確実性が付いて回ります。

 これに加えて、外部環境にも様々なリスク要因が潜んでいます。少子化・高齢化と人口減少、円高・円安など為替の変動、借入金利の変動、また米国トランプ大統領のドンロー主義のゆくえ、中国との政治・経済的緊張、国際紛争などはビジネスのリスクを増幅させます。さらに、阪神大震災・東日本大震災などのような地震や、毎年のように発生する大雨による水害などの自然災害、新型コロナウィルスのような世界的パンデミック、外国人観光客の増減なども大きなリスク要因です。

 つまり、経営とはこうした将来の不確実性の存在をすべて承知の上で、ビジネスに挑むことだと言えます。これをハイリスク・ハイリターンの原則に照らせば、ビジネスはリスクフリーの銀行預金の利息よりも高いリターンが望めるからだということになるのですが、言い換えれば、経営者がそう考えてビジネスに挑んでいると言うこともできます。実際のビジネスは多種多様ですし、各々の事業の種類に関わるリスクや、リターンの方向もそれぞれなので、リスクへの対処の方法は様々だと言えるでしょう。しかし、どのような事業であっても、リスクコントロールについて一つ、確実に言えることがあります。それは「会社を継続する」ということです。以下では、そのことについて説明しましょう。

 先程から「リターン」という言葉を使っていますが、ここでは大雑把に利益と考えておくことにします。経営者であれば、ビジネスに着手するに当たり、そのビジネスによってどの程度のリターンが望めるのか検討するはずです。それは単なる経営者の希望といったものではなく、そのビジネスに関するデータや、これまでの経験などに基づいて導き出された、根拠のあるものでなければなりません。また、それは平時の環境下における利益ということなのですが、いつが平時なのか判断し辛いので、通常は過去の実績の平均値を参考にします。そして、それが満足できる水準であれば、そのビジネスに着手するということになるのです。

 ビジネスによって生み出される単年度ごとの利益を考えた場合、各年度の利益が常に平均値となることはあり得ず、平均値よりも多くの利益が上がる年もあれば、利益の少ない年もあるはずで、中には赤字に陥る年さえあるかもしれません。しかし、単年度ごとの利益にはばらつきがあったとしても、長い年月を掛ければ、その平均利益は見込み通りのリターンに近づいていくのです。

 このように、短期的な利益だけを考えると、その不確実性は大きくなるのですが、長期的なスタンスに立って考えることにより、平均的に望む利益が実現できる可能性が高くなるという訳です。つまり、「会社を継続する」ことには時間的なリスク分散効果があり、それはビジネスが抱えるリスクの有力なコントロール方法だと言うことができるのです。