福山平成大学 小川教授の「経営の福袋」第52リスクについて(下)

前回のコラムで、サイコロを使った思考実験の宿題を出しましたが、皆さまはA~Dのどのコースを選ばれたでしょうか? 結論的には、どれを選んでも期待できる収益は100円となり、各コースとも「期待リターン」が等しいことになります。期待リターンとは、それぞれのコースにおいて各目の出る確率(今回はサイコロですので、どの目も確率は1/6)と、その目の出た時の賞金額の積を足し合わせた額のことです。より直感的に言えば、どのコースも何度も何度もサイコロを振り続けた場合、1回あたりの平均賞金額が100円に収束するということです。

 このように、どのコースも期待リターンは等しくなるのですが、リスクは異なります。Aコースはどの目が出ても、確実に100円もらえるのでリスクフリーです。それに対して、B~Dの場合には不確実性があります。Bの場合、1/2の確率で200円もらえますが、1/2の確率で0円となってしまいますし、Cでは1/3の確率で300円ですが、2/3の確率で0円です。さらにDの場合、1が出れば600円と最大金額を手にすることができますが、その確率は1/6であり、他の目の出る確率は5/6で、その場合すべて0円です。つまり、BよりもC、CよりもDとリスクは高くなっているということです。

 さて、これを「ハイリスク・ハイリターンの原則」に照らして、皆さまが理論通り経済合理的であれば、どなたも同じ大きさのリターンに対して最もリスクの低いAコースを選択されているはずなのですが、いかがでしたでしょうか? 中には、B~Dを選ばれた方もおられたのではないでしょうか。実際に、講義で学生たちに尋ねてみても、結構な数の受講生がB~Dを選択します。では、次の場合はどうでしょう。もし、賞金をすべて1万倍にして、Aコースであれば確実に100万円が手に入り、Bなら1/2の確率で200万円、Cなら1/3で300万円、Dなら1/6で600万円賞金がもらえるというケースです。

 すると今度は、受講生たちのほとんどがAを選択するようになります。さて、皆さまはいかがでしょう。やはり、冒険(つまり、リスクテイク)などせずに、確実に100万円を手にできるAを選択される方が多くなるのではないでしょうか。もし、理論で仮定されているように人間が経済合理的であるならば、今回の思考実験の場合、金額の多寡に関わらずAコースが選択されることになるはずなのですが、そうもいかないのは、ボクたち人間が必ずしも経済合理的ではないことを示しています。ですから、盲目的に理論を信じて現実に当て嵌めようとしても、上手くいかない場面が生じることがあるという訳なのです。

 話が少し難しくなってきましたので、元のリスクの話に戻しましょう。こうしてリスクを将来の不確実性だと考えると、われわれはリスクの中で生きているということになります。つまり、われわれの生は常にリスクの中にあるということです。このことを理解すれば、無暗にリスクを怖がるのは詮無いことだということに気付きます。誰しも将来は不確実であるが故に、われわれにできることは前向きにリスクに立ち向かう心構えを持ち、対応力を高める知恵と力を養う努力を怠らず、迎えた局面に精一杯対処した上で、後は人事を尽くして天命を待つという覚悟を持つことだと、ボクは考えています。