福山平成大学 小川教授の「経営の福袋」第23回 他山の石

 先日の日本経済新聞に、「科学者信頼度日本は下位―コロナ拡大後の調査」というタイトルの記事が掲載されていました。たいへん小さな記事だったのですが、科学者の端くれであるボクとしては、どうしても気にせざるを得ませんでした。そこで、その記事を読んでみると新型コロナウィルス感染拡大後の2022年から2023年にかけて、国際研究チームが行った科学者に対する信頼度の調査に関するものでした。それは、世界の68の国や地域に住む約7万2千人を対象にした調査であり、5点満点で平均スコアが3.62点だったという結果から、ほとんどの国で科学者は信頼されているという結論が英国の科学誌で発表されたというニュースでした。

 しかし、その中で日本の科学者のスコアは3.37点となっており、68の国や地域の中で59位と、下から10番目だったとされていることから、その中の一人である(…と自分では思っている)ボクも情けなく、申し訳なく思った次第です。この調査は、科学コミュニケーションの専門家241人が参加して行われ、調査方法は共通の質問を基に「科学の能力」、「誠実さ」、「透明性」といった側面から科学者への信頼度を数値化し、分析したものです。その結果、全体では「科学者は有能だ」という回答が78%、「誠実だ」という回答が57%となっていたことから、平均3.62点で調査対象となったすべての国や地域で、高くも低くもない3点を超えていたということでした。ただ、59位となった日本がスコアを下げた要因として、「他者への思いやりがあるかどうか」や「透明性」の評価が低かったことが影響しているとされていました。

 確かに、わが国では一般的に科学者の評価基準と言えば、「科学の能力」のことだと解釈される傾向が強いように思われます。もちろんそれが本筋なのですが、この記事からはそれだけに限らず、本質的に科学者には「透明性」はもちろんのこと、「他者への思いやり」や「誠実さ」が大切な素質だということが世界的な共通認識であることもわかります。ボクはいつも考えているのですが、もし誰かに、何のために科学的探求を行っているのかと問われるならば、それは根源的には人々の幸福の向上に資するためであると答えるつもりです。偉そうに言えば、端くれながらもこれがボクの学者としての矜持であり信念です。それだからこそ、他者への思いやりや誠実さは科学者として、確かに評価を受けるべき欠かせない要素だと思っています。

 この記事での少し残念な結果は、科学者を対象とした調査によるものでしたが、(わが業界のことを棚に上げて申し上げれば)今の日本を見ると、これは決して科学者だけの問題ではないような気がしてなりません。今一度、この結果を他山の石として、互いに他者への思いやりが薄れていないか、誠実さを失いつつあるようなことはないかと自らを省みることが必要なのではないかと思っているわけです。