今年も年度替わりの時期を迎え、皆さま慌ただしくお過ごしのことと思います。本学でも先日、卒業式が執り行われ、4年間の大学生活を終えた卒業生たちが社会へと飛び立っていきました。その一方で、間もなく行われる入学式では、また新たな学生生活を開始する新入生を迎え入れることになります。
私事で恐縮なのですが、この時期になるとボクは、母校の小学校や中学校の校歌を思い出します。実は、ボクの密かな自慢の一つが、66歳になった今でも母校の校歌を歌うことができることです。特に、生まれ育った三原で通った三原小学校と三原第三中学校の校歌は、今でも生まれ故郷の記憶を蘇らせてくれるとともに、歌詞の内容はボクの生き方の一つの指針となっています。双方の校歌の美しく格調高い旋律をお伝えできないのは残念ですが、両校歌の歌詞を、以下にご披露してみましょう。
まず、三原市立三原小学校の校歌です。「朝風清く水清き、沼田川永久(とわ)に囁くは、清きを競いて今日もまた、開け行く世に先駆けて、磨け心の鏡をと」。老婆心ながら、歌詞の意味を紐解きますと、「朝の清風が吹く沼田川の清らかな流れが、常にわれわれに囁き続けているのは、進展していく世の中に先駆けて互いに切磋琢磨し、いつも自らの心の鏡が曇らないよう磨かなければならないという教えである」ということです。
次に、三原市立第三中学校の校歌です。「谷川野川を集(つど)え来て、沼田の大川弛(たゆ)みなく、己の道を一筋に学びの海に今こそ注げ、三原三中、教えも斯(か)くて幸ある我ら」。この歌詞は、「小さな谷川や野川の流れを集めて沼田川は大きな流れとなり、弛みなく流れ続けている。そのように、自らが志す道をコツコツと一筋に励み、今こそ学びの大海に注ぎ込め。こうした三原三中の教えを受けることができる我らは幸いである」という意味です。
他人の母校の校歌に興味などないと思われる方が多いかもしれませんが、ここでお伝えしたいことは、われわれが学ぶべき機会というのは、実はこうして身近にあるということです。そして、他の人にとっては何でもないことが、ある人にとってはとても大切な意味を持つことがあるということです。それ故に、一方で、身の回りにあるたくさんの有用なヒントに気づくためには、日々好奇心を持って暮らす心掛けが必要であり、他方で、自らの何気ない発言や行為が他者に大きな影響を与えることがあると思えば、日頃から互いに善い行いを心掛けなければならないということです。
今、ボクがこうして学者になれたのも、実は、三原三中の校歌3番にある「古きを温(たず)ねて創造に、求めよ真理、磨けよ知性」という歌詞が、挫けそうになった時のボクの心を支えてくれたお陰なのです。因みに、両校歌とも福山出身の童謡詩人で教育者、福山市名誉市民でもある葛原しげる先生の作詞です。