福山平成大学 小川教授の「経営の福袋」第17回 人口減少の現状を直視する(下)

経営学の主要な分野の一つである経営戦略論では、企業が戦略を策定する目的は「適者生存」を実現するためだとされています。この適者生存という考え方は、19世紀イギリスの自然科学者C.ダーウィンが、その著『種の起源』において唱えた「進化論」の中核となる「自然淘汰」の中心的な原理であり、「弱肉強食」もその一つです。一般に、「ダーウィニズム」と呼ばれる彼の自然淘汰の考え方は、その後の西洋の学問に大きな影響を与えています。こうした背景から、経営戦略論においても企業を取り巻く外部の環境は常に変化しており、企業はその環境変化に適応していかなければ生き残ることができないため、環境に適応した戦略が必要だという訳です。

 つまり経営戦略策定においては、企業を取り巻く外部環境が現在どのような状況にあるのか、また将来どのように変化していくのかを把握することが重要だということです。経営学では、外部環境の現状を分析する手法として3C分析を始め、PEST分析などいくつかのフレームワークがあり、それなりに現状を把握することは可能だと言えます。その一方で、将来のことを予測することが非常に困難であることは、皆さま重々ご承知の通りで、この点についてはP.F.ドラッカーも、将来のことは予測できないと明言しています。

 しかし、彼が人口構造だけは唯一、未来に関する予測可能な事象だとしていることは前回もお伝えした通りで、これを踏まえると将来、日本の人口が減少することは既に明らかな事実だということです。例えば、政府は少子化対策の目玉として2008年に内閣府特命担当大臣を設置し、16年間以上にわたって歴代27人の大臣がそのポストを担当してきましたが、その間も日本の出生率が下がり続けてきたという事実を見ただけでも、人口動向がそのような人為的な政策などで抗えないということは明白なことです。客観的な事実とは、将来の日本社会は今よりも人口が少ない社会になるということであり、そのことを前提に戦略を策定する必要があるということなのです。

 例えば現在、日本の人口は1億2,260万人ですが、一昨年GDPで日本を抜いて世界第3位となったドイツの人口は8,330万人です。これは客観的な事実ですが、皆さまどうお考えになりますでしょうか? また、イギリスが6,800万人、フランスは6,490万人と共に6千万人台であり、広大な国土を持つカナダは3,910万人、オーストラリアは2,670万人、福祉国家の鑑と言われるスウェーデンは1,070万人、同じ北欧のノルウェーとフィンランドに至っては共に550万人です。

 その他にも人口減少に関して、多くの方が見落としている(直視しようとしない)事実を挙げることができますが、それは別の機会に譲ることとして、最後に一言だけ申し上げておきたいのは、戦略とは客観的な事実を基に策定し、実践しなければ望む結果は決して得られないということです。