福山平成大学 小川教授の 「経営の福袋」第61回 情報安全週間

 4月23日は、「子ども読書の日」です。政府広報を見ると、「子どもの読書活動は、子どもが、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことのできないもの」なので、「家庭、地域、学校などでの読書活動を進めるため」に、法律でこの日が定められたとされています。また、この日を初日に「子どもの読書週間」が設けられ、今年も5月12日までの間、地元の福山市や府中市の市立図書館などでも関連行事が開催されています。
 特に、この法律自体に規定はないのですが、法的に「子ども」とは0歳から18歳未満の未成年者を指します。公益社団法人「全国学校図書館協議会」は毎年6月上旬、小学生(4~6年生)・中学生・高校生を対象に『学校読書調査』を実施しています。調査結果を見ると、昨年5月ひと月間の平均読書冊数は小学生が12.1冊、中学生が3.9冊、高校生が1.4冊となっており、上級の学校の生徒ほど読書冊数が少なくなっています。ただ、この傾向は以前からも見られ、過去31年間の推移を見ると小中学生は総じて右上がりの傾向がある反面、高校生は横ばいとなっています。
 また、「不読者」とされるその間の読書冊数が0冊だった生徒の割合は、小中高それぞれ9.6%、24.2%、55.7%となっています。これも、上級の学校ほど本を読まない傾向を示していますが、31年間の推移を見るといずれも当初の減少傾向から長い間、横ばいが続き、ここ2、3年前から増加に転じている傾向が見られます。時折、「若者の読書離れ」などという表現を目にすることがありますが、少なくてもこの調査結果を見る限り、それは事実ではないと言えそうです。「若者の〇〇離れ」とか、「最近の若者は…」などといった紋切り型の情報を安易に信じ込み、ステレオタイプな思考に陥ることのないよう十分注意したいものです。
 文芸評論家の故小林秀雄が、1954年に『新潮』に書いた「読書週間」という文章があります。内容は、読書週間に因んで依頼を受けた講演録です。彼は開口一番、何と言っても発行される本が多過ぎて、近頃は本にはうんざりしていると言います。その上で、「交通安全週間」を例に挙げ、それは乗り物が多くなり過ぎて、人々の安全が脅かされるようになってから始まった行事だと前置きした上で、こう本が多過ぎては、読書の安全が脅かされているに相違ないので、いっそのこと「読書安全週間」とした方がいいのではないかと主張します。
 すなわち、「本という物質の過剰が、読書という精神の能力を危険にさらしている」ので、本の過剰による「夥しい事故が、決して眼に見えないというところが、この危険を決定的なものにしている」と実に鋭い指摘をしています。この文章は70数年前のものですが、「本」という言葉を「情報」という言葉に置き換えてみると、まさに昨今の情報の過剰が、われわれの精神にもたらしつつある深刻な問題にピタリと当てはまります。
 そうした意味で、小林に倣い「情報安全週間」でも設けて、手放しに情報を有難がるばかりではなく、それによって、われわれの精神が危険に晒されているという深刻な側面を、真摯に考えるべき機会が必要なのではないかとボクは思っています。