9月半ばを過ぎても真夏のような日が続き、今年は、いつ秋が来るのだろうと本当に心配です。とは言っても、鮮魚店の店頭にサンマが並び始めたのを見ると、秋は着実に近づいているんだなぁと思う今日この頃です。そこで今回は、サンマに関する話題を一つ。
みなさんは、サンマを選ぶ時、何を基準にされますか? きっと多くの方は、眼が濁っていないか否かという点ではないでしょうか。ボクも、まずサンマの眼を見ますが、以前、「オラクルひと・しくみ研究所」代表の小阪裕司さんの講演だったか、著書だったか、ネットの記事だったか忘れたのですが、サンマに関する話を知って以来、ボクはサンマにこだわりを持っています。それは、次のような話です。
秋になって魚屋さんの店頭に、砕いた氷を敷き詰めた大きな銀色のトレイが2つ、いずれにも新鮮そうなサンマが並んでいます。そして、一方には「サンマ」1尾200円、もう一方には「上サンマ」1尾250円と書かれた値札が置かれています。店頭で、しばらく買い物客の様子を見ていると、価格の安い「サンマ」の方が売れていきます。確かに、見た目の大きさは変わらないし、どちらのサンマの眼も澄んでいます。それなら、ボクも迷わず価格の安い「サンマ」の方を買うだろうと思います。
そこで、魚屋の大将に尋ねます。この「サンマ」と「上サンマ」というのは、何が違うのですか? すると大将、「サンマはね、こうして背中の方から見るんだよ。ほら、「上サンマ」は「サンマ」と比べて、グッと横に厚みがあるだろう。これが、脂が乗ってる証拠。こっちの方が美味しいサンマだから、「上サンマ」なんだよ」と熱く語ってくれます。「なるほど‼ …でも大将、それってお客さんに伝わっていませんよ」ということで、早速、「サンマ」と「上サンマ」を一尾ずつラップに包んで見本にし、背中側をお客さんから見えるように並べて、この厚みの違いが脂の乗った美味しいサンマを見分けるポイントだと説明書きを付けたところ、今度は「上サンマ」の方がどんどん売れていったということでした。
いかがですか、みなさん。これなら、「上サンマ」を食べたくなりませんか? ボクは、断然「上サンマ」です。その証拠に、ボクはこの話を知って以来、毎年この時期になるとサンマの背中を見比べています。
折角、良いもの、美味しいものをお客さんに手にしてもらいたいと思っていても、肝心な情報がきちんと伝わっていなければ、売り手の大将ばかりではなく、買い手のお客さんにとっても、とてももったいない話です。お互いに、独りよがりには気を付けたいものです。